ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の作品について
先日ちょっと書きましたが、"Pet Sounds" はたしかに良いアルバムだと思うけど、他のアルバムを知った上での方がより楽しく聴くことができるんじゃないかと思います。
ブライアン・ウィルソンという人の才能が開花したアルバムではあるけども、それだけがビーチ・ボーイズじゃないしという部分があるわけですよ、どうしても。
この一枚だけ聞いておけばというのは難しい話。経歴の長いバンドだし、アルバムを量産していたバンドでもあるのでそれは無理かと。(これは Rolling Stones にも言えることかと)
1960年代の
キャピトル時代の作品だけでもいいんで全部揃えて欲しいってのがほんとの気持ちではあるんですが、さすがに全部となると大変ですもんね。
(リプリーズへの移籍後のアルバムも容易に入手できるようになったんで、それも含めて全部と言いたいけど、リプリーズ以降には明かな「駄作」もあるんで、全部がお薦めとは言えません)
ビーチ・ボーイズの場合、いわゆる「ベスト盤」が多数出ていて逆にどれを選べば?という状態なのがこれまた難しくしているように思います。
以前だったら1974年に出た "
Endless Summer" と 1975年に出た "
Spirit of America" を買っておけばという感じでしたけど、その後もたくさんの類似「ベスト盤」、いろいろな切り口の「ベスト盤」が出ているんで困った状態。
(ビートルズだったら「赤盤」と「青盤」買っておけばみたいな感じで済むんですけどもね)
「キャピトル時代」で「スタジオ録音」のアルバムだけでもこんなにあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ザ・ビーチ・ボーイズの作品
スタジオ・アルバムより(
年、邦題、原題の順)
1962 サーフィン・サファリ Surfin' Safari
1963 サーフィン・U.S.A. Surfin' USA
1963 サーファー・ガール Surfer Girl
1963 リトル・デュース・クーペ Little Deuce Coupe
1964 シャット・ダウン・ヴォリューム2 Shut Down Volume 2
1964 オール・サマー・ロング All Summer Long
1964 ザ・ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム The Beach Boys' Christmas Album
1965 ザ・ビーチ・ボーイズ・トゥディ The Beach Boys Today!
1965 サマー・デイズ Summer Days (and Summer Nights!!)
1965 ビーチ・ボーイズ・パーティ Beach Boys' Party!
1966 ペット・サウンズ Pet Sounds
1967 スマイリー・スマイル Smiley Smile
1967 ワイルド・ハニー Wild Honey
1968 フレンズ Friends
1969 20/20 20/20
1962年のデビュー以降、年3枚(1964年はライブ盤も出ているんで年4枚!)というペースでアルバムをリリースしていたわけでやっぱり凄いよなと思います。(そのプレッシャーでブライアンは〜と続くわけですが・・・)
これらのアルバム、確かに穴埋め的な曲が入っていたりする部分もあるけれど、それはそれ。「サーファー・ガール」〜「ペット・サウンズ」までは誰にでもおすすめ。捨てアルバム無しと言い切れます。
ペット・サウンズ以降のアルバムもキャピトル時代という括りであればどれも十分なレベル。1968年リリースの「フレンズ」はサイケデリック+ソフトロックの隠れた名盤です。
(なのでこれらのアルバムは2in1+ボーナストラック形式でリリースされているものがお買い得)
初期の作品はベスト盤で済ませても良いけど、この2枚はぜひアルバムとして聴いて欲しいと思います。
で、ビートルズで言うところの "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" 的な位置づけに "Pet Sounds" があると喩えるとわかりやすいのかなと。
(わかりにくくなったとしたらごめんなさい)
実際の時系列ではこうなります。
「シングル」全盛期からのスタートになるので迷ったんですが、シングルだとチャートアクションも含めてになるし、ここは「アルバム」単位で。
ビートルズはUK盤でのもの。ビートルズのUS盤は発売元のキャピトルが編集したアルバムですが「比較」なのでご勘弁を。(
青文字=ビーチ・ボーイズ関係、
赤文字=ビートルズ関係)
- 1940年10月9日 John Lennon 誕生
- 1942年6月18日 Paul McCartney 誕生
- 1942年6月20日 Brian Wilson 誕生
- 1962年10月1日 The Beach Boys - "Surfin' Safari" 発売
- 1963年3月22日 The Beatles - "Please Please Me" 発売
- 1963年3月25日 The Beach Boys - "Surfin' USA" 発売
- 1963年9月16日 The Beach Boys - "Surfer Girl" 発売(ブライアン・ウィルソンのプロデュース開始)
- 1963年11月22日 The Beatles - "With The Beatles"
- 1963年10月7日 The Beach Boys - "Little Deuce Coupe" 発売
- 1964年3月2日 The Beach Boys - "Shut Down Volume 2" 発売
- 1964年7月10日 The Beatles - "A Hard Day's Night " 発売
- 1964年7月13日 The Beach Boys - "All Summer Long" 発売
- 1964年10月19日 The Beach Boys - "Beach Boys Concert" 発売
- 1964年11月9日 The Beach Boys - "The Beach Boys' Christmas Album" 発売
- 1964年12月4日 The Beatles - "Beatles for Sale" 発売
- 1965年3月8日 The Beach Boys - "The Beach Boys Today!" 発売
- 1965年7月5日 The Beach Boys - "Summer Days (And Summer Nights!!)" 発売
- 1965年8月6日 The Beatles - "Help!" 発売
- 1965年11月8日 The Beach Boys - "Beach Boys' Party!" 発売
- 1965年12月3日 The Beatles - "Rubber Soul" 発売
- 1966年5月16日 The Beach Boys - "Pet Sounds" 発売
- 1966年7月11日 "Best of The Beach Boys" 発売(Pet Soundsに合わせ、レコード会社が勝手に発売したもの)
- 1966年8月5日 The Beatles - "Revolver" 発売
- 1967年7月5日 The Beatles - "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" 発売
- 1967年9月18日 The Beach Boys - "Smiley Smile" 発売
- 1967年11月27日 The Beatles - "Magical Mystery Tour" 発売
- 1967年12月18日 The Beach Boys - "Wild Honey" 発売
- 1968年6月24日 The Beach Boys - "Friends" 発売
- 1968年11月22日 The Beatles - "The Beatles" 発売
- 1969年1月13日 The Beatles - "Yellow Submarine" 発売
- 1969年2月10日 The Beach Boys - "20/20" 発売
- 1969年9月26日 The Beatles - "Abbey Road" 発売(ビートルズの最後の録音)
- 1970年5月8日 The Beatles - "Let It Be" 発売
- 1970年5月 The Beach Boys - "Live in London" 発売(UKでのリリースが先行)
- 1970年8月31日 The Beach Boys - "Sunflower" 発売(リプリーズ移籍後の初アルバム)
- 1971年8月30日 The Beach Boys - "Surf's Up" 発売
ビーチ・ボーイズのデビューからビートルズの解散あたりまでを時系列にしてみたわけですが、なかなか面白い結果になったかと思います。
(時系列での比較ってやってそうでやってないかもということでやり始めたら結構大変でした)
やはりブライアン・ウィルソンという人の才能が開花した時期、アルバムで言えば1963年の "Surfer Girl" から "Summer Days (And Summer Nights!!)" までの勢いはすごいなと思います。
あと、ブライアンはポールと同い年(誕生日が2日しか違わない)という点と、Beatlesには George Martin がいたけど、Beach Boys にはそのような存在がいなかった(ブライアンは Phil Spector を尊敬してたけどPhil Spectorからは冷たく扱われて・・・)というのもありますね。
ということで、ビーチ・ボーイズとビートルズを比較すると、USとUKの違いとかもあるんでしょうが、ビートルズは恵まれていたんだなぁと思います。ビーチ・ボーイズは
Hal Blaine らの豪華なスタジオミュージシャンが参加していたという面もありますけど、それでもビートルズはいろいろ恵まれていたんだなと。(実力、人気が備わっていた上にツアー活動を止めたり、レコード会社との関係も良好だったという点などなど)
ビーチ・ボーイズの入門用だとこの一枚からというのが良いかと思います。
30曲入っていて1000円以下なのでお得度も高いです。
ビートルズで言うところの "The Bearles 1" みたいな存在。
こっちはNo1ヒット集じゃないですが、最近のコンピレーション盤なので幅広い年代から選曲されています。(ココモも入ってます)
次に特におすすめの時期のアルバムを。(オリジナルアルバム)
Pet Sounds以外は"2in1"なのでお得です。(2001年デジタルリマスター盤)
これも2in1仕様です。余裕があればぜひ。
初期のサーフィン、ホットロッドの楽曲はやはり外せません。
未完成だった "SMiLE" の破片ではあるんだけど、輝く破片の数々。Smiley Smile と
Surf's Up は "SMiLE" がリリースされてからもやはり名盤。
で、その "SMiLE" を2004年に「完成」させたブライアン・ウィルソンのアルバムも必聴。
"SMiLE" の破片を2004年にブライアンが「完成」させたものをベースに、当時の破片、その後のアルバムに収録されたものを組み合わせたのが "Smile Sessions"。
やはりこれは上級者向けだと思います。(「これから」の人にビートルズ・アンソロジーをすすめないのと同じ理由)
日本盤だと紙ジャケだったり萩原健太さんが入魂のライナーノーツが入っているんで、余裕がある方は日本盤がおすすめです。