2012年6月16日

自公の推す「違法ダウンロード刑事罰化」が衆院通過

今日のニュースで言えば、やっぱりこの話題かなと。

INTERNET Watch
DVDリッピング違法化+私的違法ダウンロード刑罰化法案、衆議院で可決
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120615_540420.html

衆議院の文部科学委員会で15日午前、著作権法の改正案について審議・採決が行われ、“リッピング違法化”などを盛り込んだ政府案が全会一致で可決した。あわせて、自民・公明の両党から“私的違法ダウンロード刑罰化”を追加する修正案が採決直前で提出され、賛成多数で可決された。
さらに法案は同日午後、衆議院本会議に上程され、修正案を含めて賛成多数で可決された。

こういう行為は違法だよという線引きをしたのが政府案
違法なんだから刑罰も追加しろよというのが自民党と公明党から出された修正案

民主党はそこまで踏み込む気は無かったんだけど、消費増税賛成してやるから罰則化な、と推してきたのが自民・公明。
今回の修正案は「社会保障と税の一体改革」という名の消費増税を通したい与党・民主党が自民と公明の協力を得るために妥協したもの。(他にもいろいろセットで調整したようですが)


コラムニストの小田嶋隆さんが「「違法なら罰則があって当然じゃないか」という感じの早呑み込みが待ち構えているからだ。」という書き出しで始まるコラムで詳しく書かれているのでぜひ読んで頂きたいところ。

小田嶋隆さんのコラム
日経ビジネスオンライン ハードディスクに眠る違法データと遺書
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120614/233357/

「違法なら罰則があって当然だ」という見方は、実は、かなり大幅に間違っている。
法の実態はそんなに単純なものではない。
禁止が定められていながら、それを破った場合の罰則が定められていない法令は、実のところ、山ほどある。

日弁連は「刑事罰を導入する」ってことに反対を表明しています。

日本弁護士連合会
違法ダウンロードに対する刑事罰の導入に反対する会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120427_2.html
報道等によれば、音楽等の私的違法ダウンロードについて、自民党及び公明党は、政府提案の著作権法の一部を改正する法律案を修正し、刑事罰(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)を設ける方針であり、民主党も受入れについて検討しているとのことである。

前文はわかりやすく書かれているんですけど、「なんで」 という部分が法律用語駆使でわかりにくいので以下、意訳(原文をまず読んでみて下さいね)。

  1. まず「私的領域」に刑事罰を入れることにはとても慎重じゃなきゃならない。個人の違法ダウンロードによる「財産的損害」って実際のところは極めて軽微なものでしょ。いまのところ「刑事罰」を導入するような行為って認識になってないでしょ。
  2. 「私的使用目的であっても例外的に違法とされている複製行為」(著作権法30条1項柱書の適用が除外されている行為)の中で「ダウンロードのみ」に刑事罰を導入するのは刑のバランスを欠くよね。
  3. すでにある「違法アップロードに対する罰則規定」を活用したり、著作権ってどういうものかを教えることとかやることは他にもあるでしょ。
  4. すでに平成21年に著作権法を改正して「ダウンロードを民事上違法」としたけど、その後をちゃんと見極める必要があるよね。
  5. 「刑事罰」にすれば抑止力が期待できるって言うけど、その効果には疑問だね。


以下、長くなりますが引用。
海外において、刑事罰が定められている国においても、それが積極的には運用されていないという実態があり、国際的な比較からも、現時点で刑罰化を急がなければならないとは考えられない。
したがって、まずは、違法アップロードの検挙実績とその成果を慎重に検討し、違法アップロード対策をより充実させることを検討すべきであり、これを抜きにして違法ダウンロードを直ちに刑事罰の対象とすることは、あまりにも拙速と言わざるを得ない。
よって、今回の違法ダウンロードに対する刑事罰の導入には反対であり、今通常国会において拙速な修正案の提案やそれに関する審議がなされることがないように強く求める。

一段目は他所の国との比較ですね。グローバル・スタンダードってやつ。それと比較しても厳しすぎるんじゃないのということ。

二段目は違法アップロード対策を充実させなきゃ駄目でしょということ。違法アップロードを取り締まらないで違法ダウンロードだけってことになったらおかしいわけで。

三段目はすでに衆院を通過ということで、暗雲が・・・


冒頭のInternet Watchの記事でも、
DVDリッピング違法化よりも恐ろしい(?)私的違法ダウンロード刑罰化」との見出しで
 リッピング違法化については強い反対意見があるのも事実だが、この規定を含む政府案は、文化庁の文化審議会での議論や報告書、パブリックコメントなどを経て出てきたものだ。対して、修正案の私的違法ダウンロード刑罰化は、オープンな議論がないまま立法化されようとしていることで問題視されている。
と強い口調で書いてます。
DVDリッピングの違法化については反対意見もあったけどパブコメを経て十分な議論をしてきましたよね。ここまではわかりますと。太字にした部分が問題だろってところ。刑事罰を導入することへの疑問ですね。
 そもそも私的違法ダウンロード刑罰化は、権利者側が以前から訴えていた方向性であり、これまでも文化審議会で繰り返し訴えられていた。ダウンロード違法化の施行後も、罰則がないために、違法アップロードされた音楽などのダウンロードが減らず、音楽産業に多大な損害を与えているといった主張だ。もちろん、違法ダウンロードがまん延するような状況は望ましくないが、その行為に刑事罰を科すことが果たして合理的・妥当なのかという議論がまずある。また、刑事罰化することで懸念されるさまざまな問題点も指摘されており、文化審議会の議論では合意には至らず、政府案には含まれなていなかった。

権利者側の意見がそうだったということが書いてあります。
「罰則がないから無くならないんだ!」という権利者側の声ですね。
そこまでは踏み込まないことでまとまったのが政府案。

 一方、自公では、著作権法の改正案とは別個の法案として、私的違法ダウンロードに刑事罰を科す法案を検討していた模様だ。自民党の河村建夫衆議院議員は昨年12月、「音楽等の私的違法ダウンロードの防止に関する法律案」の共同提出に向け、自公が党内手続きを完了したことを自身のホームページで報告していた。


ということで、自民党と公明党のおかげで「権利者側」の意見を反映できましたとさ。

簡単にまとめると、
  • CDは今まで通り私的なリッピング、コピーをすることができます。(暗号処理のプロテクトが無いんで)
  • 暗号処理のプロテクトが掛かったDVD(映画など)はリッピング・コピーしちゃ駄目です。
  • SACDもプロテクト掛かっているんでリッピングしちゃ駄目です。(DSD抜きNG)
  • 違法なアップロードは今まで通りやっちゃ駄目です。
  • (日本に限らず)違法にアップロードされていたファイルをダウンロードしちゃ駄目です。
  • 違法かどうかわかんないけど、違法だったファイルをダウンロードすると「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が待ってます。←New

ドサクサに紛れて「罰しちゃえ!」という権利者側の意見が衆院を可決。残るは参院。
参議院での付帯決議ぐらいにしか期待できないのかなぁ・・・

権利者側って何?
http://ja.wikipedia.org/wiki/音楽議員連盟
http://ja.wikipedia.org/wiki/音楽文化振興議員懇談会

関連
友人から借りたCDの複製は?

続「違法ダウンロード刑事罰化」リッピング編
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_16.html
「私的違法ダウンロード刑罰化」やるべきことは「教育」と「アップロードの取締り」
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_9801.html
続・「私的違法ダウンロード刑罰化」やるべきことは「教育」と「アップロードの取締り
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_20.html
著作権法改正 -「1998年をピークに」を掘り下げてみる
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/1998.html

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