そして、さきほど参議院本会議で可決されました。(賛成221、反対12)
今年の10月からという半年未満での施行となります。
INTERNET WATCH
10月1日からDVDリッピング違法化&違法DL刑罰化、著作権法改正案が可決・成立
衆院では「いきなりの自公提案内容」(罰則化)で可決されましたが、参議院では参考人招致をしての審議が6月19日に行われました。
参議院インターネット審議中継
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
2012年6月19日 文教科学委員会
INTERNET Watch - 私的違法ダウンロード刑罰化を含む著作権改正法、参議院で審議
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120619_541239.html
衆院での可決を受けて行われた参議院の文教科学委員会では、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏、日本弁護士連合会事務次長で弁護士の市毛由美子氏、日比谷パーク法律事務所代表弁護士の久保利英明氏、一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事の津田大介氏の4人を参考人として招いた参考人質疑が行われた。岸博幸氏は元経産官僚でエイベックス役員でもあった人だそうです。(権利者側の代弁者ですね)
市毛氏の所属する日弁連は以前のエントリでも書いたように罰則化には反対を表明しています。
久保英明氏は同じ弁護士でも企業弁護士で権利者側の意見を述べています。
利用者側としては津田大介氏が出席して意見を述べています。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120619_541239.html
音楽CDの売上は1998年をピークに大幅に減少する一方、音楽ファイルの違法ダウンロードは正規音楽配信の推定10倍に上るとするデータを紹介し、業界の縮小は違法ダウンロードだけが原因ではないが、一因となっているのは間違いないと主張。ネットにおける違法ダウンロードは、リアルにおける万引きに相当する行為であり、刑罰化することが必要だと訴えた。
質疑では、「スリーストライク法」を導入したフランスでは違法ダウンロードは減少したようだが、音楽業界の収益は回復していないというデータもあるという指摘に対し、岸氏は「違法ダウンロード以外にも景気変動など様々な変数がある」として、厳密な効果の検証は困難だと答えた。記事引用でわかるかと思いますが、レコード協会(委員会では岸氏)の言う「1998年をピークに減少」した理由って違法ダウンロードとイコールではないわけです。
逆に1998年までが「音楽バブル」だっただけの話。
日本の音楽市場だけが1998年まで右肩上がりだったことはすごいね、ということです。
Wikipedia 1997年の音楽
- 8cmシングルが徐々に減り、マキシシングルの時代に
- 国内オーディオレコード(CD・オーディオテープを含む)の総生産実績は、4億8070万枚に達し、この年がピークであった。また、この年から2000年にかけて大物バンドの解散、活動休止が相次いで行われた。
国内で言えば、1997年4月から消費増税(3%から5%へ)、1997年末に山一証券の経営破綻もありました。それ以前からの「バブル崩壊」を考えれば、1998年までよく売れたもんだという風に考えないものなんですかね。
世界的には、1997年に「アジア金融危機」、1990年後半には「ITバブル」とその「崩壊」もあったわけですよ。そしてゼロ年代には「リーマンショック」も。
お金を出す部分で言えば、日本での携帯電話の急速な普及時期とも時期が重複しますし、プレイステーションの国内1000万台達成が1997年末の出来事というのも重複します。
他にも1996年11月にDVDの商用化がスタートというメディアが登場し、2000年発売のプレイステーション2でDVDを再生するということが普及していった頃。
国内市場で言えば、少子化と言われて久しいわけですし、それまでよく売れたもんだと考えるべき。
参議院の文教科学委員会でのやりとりについては、委員の一人である森参院議員のBlogでバッサリと。
http://my-dream.air-nifty.com/moriyuuko/2012/06/post-151e.html
違法DL刑事罰化の参考人質疑。
エイベックス役員の岸博幸氏は、仏のスリーストライク法により違法DLが66%減少したことをあげ、DL刑事罰化でも生ぬるいと主張した。
しかし、違法DL が減少しても、却って音楽産業の収益が減少しているのではないかという私の指摘に対して、(音楽産業の収益増減について)は、前提条件の設定が難しいので分析は困難と。
その答弁に対して、違法DLが66%も減少しているのだから、前提条件はあっても、収益が目に見えて増加していないのはおかしいと指摘。
音楽産業の収益の減少は違法DLのせいではないと皮肉にも証明されている?
まず日本の音楽権利者は「1998年比」で言うのをやめるべき。
それよりずっと前はどうだったのかということを考えれば、適正な水準に戻ったとも言えるわけです。
そして、ミュージシャンが受け取る報酬が妥当なのかどうかも。
広義の音楽市場で見た場合、コンサート、ライブでの売上は上昇しているし、「フェス」のようなイベントも数多く行われるようになっています。(CDの売上推移だけ見ていたらわからないこと)
広義の音楽市場で見た場合、コンサート、ライブでの売上は上昇しているし、「フェス」のようなイベントも数多く行われるようになっています。(CDの売上推移だけ見ていたらわからないこと)
参議院での文教科学委員会での審議では、民主党の森参院の質問に、刑事罰化推進者である公明党の池坊衆院議員の答弁はちんぷんかんぷん。条文案の繰り返しでまともに回答できていないような状態。
また、同じく刑事罰化推進の自民党馳衆院議員の答弁にも不満が残るもの。
(MacOSでもSilverlightを入れれば委員会の内容を確認できるので2012年6月19日文教科学委員会をチェックしてみて下さい)
民主党 森ゆうこ参議院議員のBlog(罰則化に反対の立場)
http://my-dream.air-nifty.com/moriyuuko/2012/06/post-151e.html
違法ダウンロード刑事罰化審議自民党 馳浩衆議院議員のBlog(罰則化推進の立場)
違法ダウンロード刑事罰化の審議は酷いものだった。
修正案提案者の池坊衆議院議員がまさかの答弁拒否をしたのには驚いた。
今日の委員会で採決されて、午後の本会議で可決成立の見込み。
私は文部科学委員を半強制的に差し替えられたので、委員会で反対票を投じることはできなくなった。
http://www.incl.ne.jp/hase/schedule/s120619.htm
10時、参議院文教科学委員会開会。
著作権法改正案修正案のお経読み~質疑。
民主党の森ゆう子さんが、明確に修正案に反対を明言される。
どうも、警察の捜査が示威的に行われる疑いが拭い去れない、別件捜査に使われる・・・とのご指摘。
起訴された場合にどういう捜査をするかは、そこは刑事政策の話。
立法府がどこまで踏み込んでよいのかといえば、例示はできても具体的には言えない。最後の一文、「明日の採決で」とありますが、6月20日に森ゆうこ議員は「文部科学委員を半強制的に差し替えられた」ので反対票を投じることができず「全会一致」で本会議に送られ、15:30からの本会議で採決となりました。
「繰り返し、広範囲で、知っていたという事実がメールのやり取りで明確な場合とか・・・」と、答弁せざるを得ない。
「平成21年の著作権法のころから、違法に配信された著作物であることを、知っていてダウンロードした行為は違法であると明確にしていた。むしろ、罰則化は遅すぎた。」と、答弁申し上げる。
違法は違法。
今回の修正案でも、
「著作権や著作隣接権を守るべき!」
「罰則ありきではない。国や地方自治体による啓発、青少年への教育、事業者による防止措置、運用上の配慮、施行1年後の見直し規定を入れており、罰則化が目的ではないことは明らか。」と、申し上げるも、森さんは聞く耳持たず。
見解の違い。
民主党内のご意見も受け入れて今回の修正案を取りまとめたのであり、よっぽどそのことを申し上げようかと思ったが、聞く耳を持たない人には、これ以上何を言っても、という状況。
明日の採決で、どういう投票行動をされるか、だ。
INTERNET Watchでの記事を時系列で
福井弁護士のネット著作権ここがポイント
著作権法改正でこう変わる――DVDリッピング規制、元・日本版フェアユース ただ今国会審議中
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20120411_525463.html
DVDリッピング違法化+私的違法ダウンロード刑罰化法案、衆議院で可決
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120615_540420.html
私的違法ダウンロード刑罰化を含む著作権改正法、参議院で審議
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120619_541239.html
“私的違法ダウンロード刑罰化”などの著作権法改正案、参議院の文教科学委員会で可決
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120620_541251.html
10月1日からDVDリッピング違法化&違法DL刑罰化、著作権法改正案が可決・成立
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120620_541251.html
日本レコード協会、「私的違法ダウンロード刑罰化」法案成立に歓迎コメント
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120620_541384.html
ということで、すでにレコード協会からのコメントが発表されています。
http://www.riaj.or.jp/release/2012/pr120620.html
今後は、改正法の趣旨を広く皆様にご理解いただくための広報活動を積極的に行うとともに、ユーザーに対するよりよいサービスの提供に一層努めて参ります。今回の法改正によりインターネット上で蔓延する著作権侵害行為が減少し、健全なインターネット社会が実現することを期待するとともに、新たな音楽・映像の創作活動に一層努めて参る所存です。「今後も」じゃなくて「今後は」なんですね。
前回の改正、平成21年の改正(自民公明政権時)で「違法ダウンロード」が定義されたけど、その際の記事はこれ。
2010年1月から施行された改正著作権法の内容と狙いが明確に書かれています。
CNET Japan -「違法ダウンロードは社会正義に反さないが、権利者に悪影響」--文化庁
2009/07/30 22:00
http://japan.cnet.com/news/media/20397569/
改正著作権法は、著作物を無断でアップロードする側だけではなく、ダウンロードする側も違法としたことが大きな特徴。ただ、悪意を持たないユーザーであれば依然として第30条に規定された私的使用として認めているほか、悪意を持った確信犯的な違法ユーザーの場合でも罰則規定を設けていないなど強制力は弱く、施行前から効果を疑問視する声もある。
こうした点について川瀬氏(当時の文化庁長官 官房著作権課 著作物流通室長)は、「罰則や民事訴訟をもって解決を図るのではなく、まずはルール変更を国民に伝え、著作権への意識を高めてもらうことが大事」と説明。「個人のダウンロード行為が社会正義に反しているということではなく、それらが積もることで権利者などに悪影響を与えているということ。幸いにも日本人は遵法意識が高く、ルールの周知徹底を図ることによる効果は十分に期待できる」とした。
周知徹底においては、日本レコード協会を含む民間の権利者団体などと協力した官民一体の体制を敷く方針を示している。協会の副会長で、広報委員長を務めるキングレコード 代表取締役社長の小池武久氏は「(改正著作権法は)違法流通を撲滅するチャンスととらえている。さまざまな方法で若年層を中心に周知徹底をするつもりだ」と応じた。また、罰則規定が盛り込まれなかったことについては、「まずはルール改正を広めていくことが先、という認識で一致している」(日本レコード協会 情報技術部部長 兼 法務部担当部長の畑陽一郎氏)と納得済みの方針であることを示した。
前回の改正時にも日本レコード協会が周知を徹底すると言っていたことがわかります。
しかしその結果が前回のエントリで引用した今回レコード協会が出した意見なわけです。
法制問題小委員会ヒアリング 「著作権法第30条に係る意見」(日本レコード協会)
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h23_shiho_03/pdf/shiryo_1.pdf
著作権法が改正され、昨年 1 月より「違法な音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為が違法」となった。この法改正の周知については、官民協力して継続的に行ってきた結果、徐々にインターネットユーザーに浸透してきており、当協会が昨年実施したユーザー調査でも、10代・20代の若年層の法改正認知率は55%という結果が出ている。
日本レコード協会「違法配信に関する利用実態調査」結果公表
http://www.riaj.or.jp/release/2011/pr110309.html
「違法配信に関する利用実態調査」を2010年8月に実施したもの。
【違法ファイル等の認知・利用率】
動画配信サイトの利用率は29.6%、認知率は68.1%、P2Pファイル共有ソフトの利用率は5.0%、認知率は44.6%、その他のPCサイトの利用率は10.4%、認知率は49.3%、携帯電話向け掲示板サイトの利用率は9.4%、認知率は55.3%。
【違法ファイルのアップロード経験率】
違法サイト等利用者のうちのアップロード経験率は18.8%で、認知率は65.3%である。
権利者側である自分たちが周知徹底した結果の周知率が約半数という状態での「更なる法改正」、前回の法改正から短期間での「罰則化導入」はやはり拙速と言わざるを得ないでしょう。
参議院の委員会での審議でも「違法配信されたものをダウンロードすること」が違法なんだよということがまだ周知されていない状態なのに、拙速に罰則化するというきちんとした理由は答弁されないまま。
「違法であると知りながら」の場合にのみ適用、「一曲だけ違法ダウンロード」でも処罰に至るかどうかは軽微だからあたらないと考えるとか線引きが曖昧。
刑事罰の導入はせず、まずは正しい知識を知らしめるべき。前回の改正から本当に十分な周知が行われたのか、その結果の周知率がその程度で良いのか。まだまだ周知徹底、若年層への教育が不十分なままだと思います。
このような前回の法改正以降「違法となったということを知らない人が約半数」という状態で、「違法と知りながらダウンロード」したら罰則適用とはおかしいのでは?
親告罪であるし、令状主義だから大丈夫。というのは司法への信頼が揺らいでいる現状を考えると恣意的な運用につながるのではないか、と思う次第。
民主党がすすめる「消費増税」に自民・公明両党の協力を得るための取引材料の一つとされ、十分な審議もなされぬままでの「罰則化導入」は危険としか思えません。
#長文&まとまりの無い文章で失礼しました。
関連自公の推す「違法ダウンロード刑事罰化」が衆院通過
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post.html
続「違法ダウンロード刑事罰化」リッピング編
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_16.html
「私的違法ダウンロード刑罰化」やるべきことは「教育」と「アップロードの取締り」
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_9801.html
著作権法改正 -「1998年をピークに」を掘り下げてみる
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/1998.html
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