2012年7月13日

著作権法改正 文化庁がQ&A含む見解を公開

2012年10月から施行となる改正著作権法に関する文化庁の見解とQ&Aが公開されています。
周知期間が短い(これはこれで問題ですが)こともあり、このタイミングで文化庁が公開したのは評価できると思います。

文化庁 平成24年通常国会 著作権法改正等について
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/24_houkaisei.html


私のブログでは主に著作権法改正で「違法ダウンロード刑罰化」について書いてきましたが、今回の法改正全般についての趣旨、Q&Aが書かれていますのでぜひご一読を。

また図解した全7ページの「概要」も公開されています。

著作権法の一部を改正する法律 概要(PDF形式(1.91MB))



文字だらけでわかりにくいですよね。
家庭内で子供に教えるための資料、学校で教えるための資料が必要かと。
もうじき夏休みだし、夏休み明けには学校側でも何らかの対応をすべきだと思うのですが・・・


実際に施行され、運用がどうなるのかを危惧するよりも、今は周知徹底を優先すべき時期だと思います。(違法という認知度が約半数なんですから)

子供に「こういうことをしたら駄目」とわかりやすく説明できるのか。
今の資料だとちょっと無理じゃないかなと思います。


さて、本題。
改正の趣旨等
(1)いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備
(2)国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備
(3)公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備
(4)著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備
(5)違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

今回の法律改正の主な項目は以下の5点であり,そのうち(1)~(4)については,平成23年1月に文化審議会著作権分科会において取りまとめられた「文化審議会著作権分科会報告書」等を踏まえ,著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するために行ったものです。
あえて5番目の「違法ダウンロード刑罰化」については、以下のように書かれています。
また,(5)については,国会の審議の過程において,著作権法第30条第1項に定める私的使用の目的をもって,有償著作物等の著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,自らその事実を知りながら行うこと(以下「違法ダウンロード」という。)により,著作権等を侵害した者に刑事罰を科すこと(以下「違法ダウンロードの刑事罰化」という。)とするための規定の整備を内容とする修正案が提出され,可決,成立したものです。
「三党合意」での駆け引き材料になったということは再度書いておきます。修正案の提出者は自民党と公明党です。それを追認したのが民主党(野田政権)です。

「違法ダウンロード刑罰化」については、以前から議論されていた内容ではないこと、衆議院ではろくな議論もなく、参議院では参考人を呼んでの審議がなされたものの、形だけという感が強く、参院本会議での議決(成立)のニュースで知ったという人も多いのかと。通常は周知期間をきちんと取るものですが、その期間が4ヶ月未満という状態。

一部では『CDのリッピングが違法になる』とか、『iTunesでのリッピングができなくなる』とか誤解をしている方がまだまだ多い状態かと。
そういう誤解や疑問に対応するQ&Aになっています。

(3)著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備
問6-1 暗号方式を技術的保護手段の対象とすることにより,どのような規制が強化されるのでしょうか。(第2条第1項第20号等関係)
(答)
  DVD等に用いられる暗号方式の保護技術を新たに技術的保護手段の対象とすることにより,第30条第1項第2号において,私的使用目的であっても,技術的保護手段の回避により可能となった複製を,その事実を知りながら行う場合には複製権侵害となり,民事上の責任(損害賠償など)を負うこととなります。ただし,刑事罰はありません。
 なお,技術的保護手段の用いられていないCDを私的使用目的で複製すること(例えば,携帯用音楽プレーヤーに取り込むこと)は,著作権侵害とはなりません。
 一方,第120条の2において,
・ 暗号方式による技術的保護手段の回避を可能とする装置又はプログラムの譲渡等を行った者(第1号)
・ 業として公衆からの求めに応じて当該技術的保護手段の回避を行った者(第2号)
に対しては,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとなります。
 なお,第120条の2に規定する罰則については,非親告罪となっており,公訴を提起するために著作権者の告訴は必要ありません。
以下のように具体的なQ&Aになっています。(妙にここだけという感じがしますけど)
問6-2 今般の法改正により,技術的保護手段の対象となる保護技術とはどういうものなのか教えてください。(第2条第1項第20号関係)
(答)
 今般対象となる暗号方式の保護技術とは,コンテンツ提供事業者が映画などのコンテンツを暗号化することにより,機器での視聴や複製をコントロールする技術であり,現在,DVDやBlu-ray Discなどに用いられています。
 具体的には,記録媒体用のCSS(Content Scramble System)やAACS(Advanced Access Content System),機器間伝送路用のDTCP(Digital Transmission Content Protection)やHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection),放送用のB-CAS方式などが挙げられます。

「違法ダウンロードの刑罰化」に関する『文化庁としての意思表明』も入っています。
問7-8 違法ダウンロードを刑事罰化することにより,インターネットを利用する行為が不当に制限されてしまうのではないでしょうか。
(答)
 違法ダウンロードに係る刑事罰については,故意犯のみを処罰の対象としており,「有償著作物等」であること及び「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信」であることを知っていない場合には,刑罰の対象とはなりません。
 また,この刑事罰は親告罪(第123条)とされており,権利者からの告訴がなければ公訴を提起できないこととされています。
 さらに,違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の運用に当たっては,政府及び関係者は,インターネットの利用行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととされています。(改正法の附則第9条や参議院の附帯決議)
 これを受け,警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮するとともに,関係者である権利者団体は,仮に告訴を行うのであれば,事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられます。

警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮・・・については、先日の「13歳少年がウイルス制作で補導」という「ちょっとどうなの?」という運用がされているだけに危惧する点。

関係者である権利者団体についても「仮に告訴を行うのであれば、事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められる」と記載があり、「スリーストライク法」ではないけど、事前警告はすべきとの立場なようです。

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