2013年12月2日

著作隣接権の保護期間 - "Love Me Do" など、1962年録音音源が続々とコンピレーションCDになる理由

ややこしい話ではあるんですが、音楽の話。
  • 録音の古い、海外のミュージシャンの楽曲を集めたコンピレーションアルバムが続々とリリースされています。
  • 怪しげなルートでの販売じゃなく、普通にタワーレコードやAmazonで購入できるもの。
  • 日本のミュージシャンのものはそういうのが出ないみいたい。

たとえばこういうアルバムです。



タワーレコードだとここ。(私は安いタワレコで購入しました)

どちらのコンピレーションアルバムもThe Beatlesのデビュー直前までのイギリスの音楽シーンを切り取ったもので、これまで入手困難というか、CD化されていない音源がたくさん収録されています。

加えて、The Beatlesの1962年のデビュー曲である "Love Me Do" がどちらのアルバムにも収録されてたりします。

で、これっていいわけ?グループ名義の録音物(レコード)だから、50年経過というルールなの?となった次第。
(The Beatlesはグループだけど、このコンピレーションアルバムには個人名義のものも入ってるし・・・)

音楽雑誌(音楽ジャーナリズムなんてものまで期待してません)がこういう著作権保護期間について詳しく解説してくれるとありがたいんですけど、こういったCDの紹介はするけど、その「合法性」について詳しく書いてくれないもんだから、すっきりしないわけです。


まずは国内、日本の著作権法から。
文化庁のWebサイトには各年度毎の著作権制度に関する情報が掲示されています。

文化庁 - 著作権 - 著作権制度に関する情報 - 著作権に関する教材,資料等
http://www.bunka.go.jp/Chosakuken/text/index.html

著作権法そのものの改正や判例(映画「ローマの休日」保護期間が切れて格安DVD販売業者が訴えられたけど、最高裁判決で「合法」になったとか)をベースに更新を続けているもの。

最新のものだとこれになります。
平成25年版著作権テキスト(PDF形式)
http://www.bunka.go.jp/Chosakuken/text/pdf/h25_text.pdf

41ページに具体的に書いてあります。
(美空ひばりの「悲しき口笛」1949年録音、三波春夫の「「チャンチキおけさ」1957年録音)


③ 旧法下の実演(歌唱実演),レコードの保護期間
旧法(昭和45年(1970年)までの著作権法)においては,演奏歌唱およびレコードは著作権により保護されており,その保護期間は著作者の死後30年(団体名義は発行後30年)となっていました(他の著作物と異なり暫定延長はされていません)。そのため,旧法の著作権の保護期間新法(現行著作権法)の著作隣接権の保護期間より長い場合は,旧法による保護期間とし,さらに,この旧法の保護期間が新法施行の日から50年よりも長くなるときは,新法によって新しく保護される実演等との均衡を考慮して,新法施行後50年(2020年12月31日)をもって打ち切ることとされています。(附則第15条第2項)
例:美空ひばり(平成元年(1989年)没)が昭和24年(1949年)に行った「悲しき口笛」の歌唱の場合
  • 実演後50年:平成11年(1999年)12月31日
  • 死後30年:平成31年(2019年)12月31日→ 平成31年(2019年)12月31日まで保護
三波春夫(平成13年(2001年)没)が昭和32年(1957年)に行った「チャンチキおけさ」の歌唱の場合
  • 実演後50年:平成19年(2007年)12月31日
  • 死後30年:平成43年(2031年)12月31日
  • 新法施行後50年:平成32年(2020年)12月31日→ 平成32年(2020年)12月31日まで保護
個人の歌唱を録音したものしか例が無いってのが残念ですが、「美空ひばり」と「三波春夫」というわかりやすい話が書かれているのには好感。(具体的にイメージしやすいですからね)

ここで旧法、新法、そして「著作隣接権」というものが登場します。
調べてみてもこれ、ややこしいというか理解しにくい内容なんですね、これが。
法律を勉強した人ならすんなり入ってくるんでしょうが、残念ながら私は素人。

JASRACも解説ページを用意していますが、一般的すぎて具体的な事象だとわかりにくいもの。

JASRAC PARK
ジャスラの音楽著作権レポート
http://www.jasrac.or.jp/park/whats/whats_3.html

著作権はいつまで保護されるの?
[著作権の保護期間]
著作権は、音楽や小説などの作品ができたときから権利が発生して、作詞家や作曲家など作品を作った人が亡くなってから50年が経過すると消滅します。
例えば、2008年に亡くなった作曲家の場合は、2058年末で著作権は消滅します。
今から数百年前に亡くなっているバッハやベートーベンの作品は、だれでも自由に利用することができます。
著作権が消滅するとPD(public domain)といって「公有」されることになります。
・作者が亡くなった後は、遺族の方などが著作権を相続します。
・作者が不明の作品や会社など団体が作者になっている場合は、作品が発表(公表)された時から、50年で権利が消滅します。
・外国の曲の場合、「戦時加算」といって通常の保護期間(死後50年後まで)に約10年を加算して保護されることもあります。
著作隣接権の保護期間著作隣接権は、演奏が行われた時やCDのマスターテープ(原盤)をつくった時から、50年間保護されます。 
文化庁の著作権ガイドの範囲内というか、バッハやベートーベンを例に出されてもなぁというのが正直なところ。(クラシック音楽でも20世紀の作曲家の例があればいいんですけどね。ガーシュインの場合は?とかさ。)
著作隣接権については、ざっくりで、「著作権の保護期間の切れたクラシック音楽」でも演奏、録音が行われた時から「演奏者やレコード会社に著作隣接権が発生する」ということを併記した方がわかりやすいと思うのですが。(クラシック音楽は著作権切れてるからどんどん使えるというわけじゃないんだもの)


で、結論。
弁護士の方が具体的にわかりやすく書いているものを発見しました。(キーワードで検索しまくりましたが)

永井幸輔|コラム|骨董通り法律事務所 For the Arts
外国作品の著作隣接権の保護期間―ザ・ビートルズのレコード「ラヴ・ミー・ドゥ」は切れているのか?
http://www.kottolaw.com/column/000609.html

もうそのものズバリの内容で、最初からこういう文献を音楽雑誌はちゃんと掲載すべきだと思いますよ、ほんと。

「旧法における著作隣接権の保護期間」ではどうだったのか、「旧法下の「外国作品」の著作隣接権の保護期間」はどう扱われるのかが書かれています。
加えて海外の著作物の権利に関して調べると出てくる「万国著作権条約」や「ベルヌ条約」も踏まえてちゃんと解説してくれているのでわかりやすいです。

http://www.kottolaw.com/column/000609.html
(下線部原文のまま)
ここで、ザ・ビートルズの「ラヴ・ミー・ドゥ」の場合を考えてみましょう。
現行法では、実演家の権利は実演の翌年から50年間、レコード製作者の権利は発行の翌年から50年間継続することになります。とすると、1962年10月5日に発売された「ラヴ・ミー・ドゥ」の著作隣接権は、その翌年から50年間保護され、2012年12月31日をもって保護期間が終了したことになりそうです(※1)
これに対し、旧法では、まずレコード製作者の権利については、「ラヴ・ミー・ドゥ」がレコード会社の名義で発行されているとすると、その保護期間は発行時から30年です(旧法6条)。したがって、両者を比べてより長期である現行法の50年が保護期間となり、上記のとおり現時点では保護期間が終了していることになるでしょう。他方、実演家の権利については、ザ・ビートルズのメンバーうち「最終に死亡したる者」の死後30年間継続することになります(旧法3条2項)。したがって、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターの両氏が健在である現時点では、旧法下の実演家の権利は存続していることになるように思われます(※2)

「断定」じゃないのにはこの文章に続く部分で詳しい解説がされています。
しかし、ここでさらに疑問が生まれます。ベルヌ条約では著作物として列挙されていない演奏歌唱・レコードについても、日本では「著作物」扱いを受けていたという事情をもって、ベルヌ条約上の著作物として日本で保護されていたと考えるべきなのでしょうか。保護されていなかったなら、※3→※1と戻って、旧法下のレコードばかりか実演もすべて切れていることになりそうです。これについて、明確な文献・解説は見当たりません。しかし、私見ではありますが、次のような理由から、現行法施行当時、ベルヌ条約では外国の実演・レコードの保護は求められていなかったと考えます。
明確な文献や解説が見当たらないという事実が。
だから外国の著作物については明確に書かれているものが無いわけですね。

永井幸輔弁護士は、以下の理由で2012年12月31日で著作隣接権の保護期間が満了したと判断しています。
理由①:ベルヌ条約における「著作物」には、演奏歌唱・レコードは含まれないと考えるのが最も自然なこと
理由②:現行法制定当時、条約による著作隣接権の保護がなかったと考えられること
以上、現行法制定当時、ベルヌ条約で外国作品の実演家・レコード製作者の権利が保護されていなかったとすると、外国の実演・レコードは、日本で初めて発行された作品以外は保護されないことになります。その場合には、「ラヴ・ミー・ドゥ」が初めて発行されたのはイギリスであるため、実演家・レコード製作者の権利は旧法下の日本では保護されず、したがって、上記※1により「ラヴ・ミー・ドゥ」の著作隣接権の保護期間は2012年12月31日で満了していることになりそうです。
という解釈によって、上記のコンピレーションアルバムは「合法」な扱いとなりそうです。

じゃ、誰でも作っていいのか?という問いには、そうじゃないということが書かれています。
これまでは、レコード音源を利用するためには、JASRACだけでなく、レコード会社などの許諾を受ける必要があり、別途利用料を支払ったり、利用を拒否されたりする可能性がありましたが、著作隣接権の保護期間が満了した場合、この部分の処理は不要でレコード音源を使用することができようになるでしょう。 例えば、「ラヴ・ミー・ドゥ」を含んだコンピレーション・アルバムを製作して販売したり、国内向けの音楽配信に自由にしたり、といった事態が想定できます。
著作隣接権の保護期間中にはレコード会社などの許諾を得る必要があったけど、こうういうものが不要になるというもの。

そういうわけで、"Love Me Do" を収録したコンピレーションアルバムを制作した会社が、著作権者に許可を得ていればOKという判断になりそうです。

録音物としての "Love Me Do" には著作隣接権の保護期間が該当しますが、楽曲としての "Love Me Do" に関しては、著作権保護の期間中であるという点は注意を要します。

このタイミングでLive At BBCの音源がリリースされたのも、正規盤でリリースする機会を失いたくないから、という想像も可能かと。
(BBCで録音された楽曲はBeatlesのオリジナルの他、多数のカバー曲が含まれていますから、BBCで録音してからの著作隣接権の保護期間中に正規盤としてリリースしておきたい→海賊盤対策をしたいとも受け取れます)

#ちなみに Buddy Holly の楽曲の権利を所有しているのが、Paul McCartney なんで、The Beatles に限らず、Buddy Holly の楽曲が利用(カバー)されると「ポールがウハウハ」となります。(The Beatlesの版権がマイケル・ジャクソンに〜というのと同じ理由)


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