犯罪者の指紋情報提供 日米が協定を締結 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140207/k10015103151000.html
このニュース、フツーに流れてましたが、聞いてた私はのけぞりましたよ、いやほんと。
ケネディ駐日大使をはさんで笑顔なのは、古屋国家公安委員長と三ツ矢外務副大臣のご両人。なんでこんな笑顔なんだか、その締結した内容からすればにっこり笑っている場合じゃないと思うんですけど。
締結した内容は以下の通り。
協定は、テロとの関連が疑われる人物が入国しようとしたり、重大事件の現場に指紋が残されていたりした場合、双方の国が管理するデータベースに同じ指紋がないかどうか、直ちに情報を提供し合うというものです。アメリカ(US, United States)に入国するにはESTAでの事前申請が必要で、入国時に指紋採取されてとやたらとチェックが厳しいってのは旅行代理店だったり、パスポートセンターに行けばUS旅行なんて考えたこと無い私でも知っている話。
外務省 - 日・米重大犯罪防止対処協定の署名
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_000587.html
外務省 - 重大な犯罪の防止及び対処に関する日米間の協定(仮称)の実質合意について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_000032.html
3.本協定は,具体的には,次のようなことを定めるものです。
(1)重大な犯罪,特にテロリズムに関連すると疑われる人物の指紋情報を相手国政府に送信することにより,相手国政府が保有する有罪確定者等一定範囲の指紋情報に一致するものがあるかについて自動的に回答が得られること
(2)(1)において一致するものがあるとの回答が得られた場合には,その人物に関する追加的な情報の提供を要請できること
(3)相手国政府からの要請がない場合においても,重大な犯罪,特にテロリズムの防止等を目的として, 国内法令に従って,関連する情報を提供できること
(4)本協定の下で,提供された情報の利用目的を限定するなど,情報の保護及び保全のために必要な措置がとられること
第一項でわざわざ「自動的に回答が得られること」となっているのに注意。
第二項では「一致するものがあるとの回答が得られた場合には,その人物に関する追加的な情報の提供を要請」とあるんだから、指紋情報だけじゃなく顔写真や体の特徴、警察が把握している個人の情報などなどが提供される可能性が高いもの。
一応、日本で起きた「重大事件の事件現場に指紋」があってもUS側に問い合わせることができるようですけど、一方通行でしょ、どう考えても。(在日アメリカ軍への不平等条約たる「地位協定」が存在する状態なんだしさ)
戻ってNHK。
こうした協定は、アメリカがビザの取得を免除している37の国と地域に締結を求め、このうち日本だけが締結していませんでした。最初の文章で、これは日本だけじゃないんです、逆に日本だけがおかしかったんですと弁明してますね。これはTPP加入に関して「日本だけが」「第三の開国」などと呼んでみたり、「特定秘密保護法」に際し「日本だけが」と言っていたのと同じこと。
対象になるのは、警察庁が管理している有罪判決が確定した犯罪者など1000万人余り分の指紋のデータとアメリカ側の7000万人分のデータです。
ここが要注目で、「対象になるのは、警察庁が管理している有罪判決が確定した犯罪者など1000万人余り分の指紋のデータとアメリカ側の7000万人分のデータです」とあります。
警察庁が管理している指紋データが「1,000万/12,722万」ってこと?
日本の人口って1億2722万人(2013年8月確定値)、そのうち未成年は1353.5万人(人口推計のPDF資料はここ。2343千人+5377千人+5815千人を足したのが1353.5万人)なわけで、ざっと言ってしまえば、日本の人口の1/10人の指紋データがあるということ。
外務省では「相手国政府が保有する有罪確定者等一定範囲の指紋情報」となっていますし、不起訴処分はもとより、事件などで任意で取り調べを受けたり、捜査の際に任意で提供した指紋データ(盗難事件などでの指紋採取時に捜査協力で事件解決のために提供したもの)まで含まれる?
照会できるのは、テロや殺人など協定で決められた一定の犯罪に限られるということで、警察庁は、アメリカ側がより具体的な情報を求めた場合、目的を明らかにすることが条件となっているほか、照会の履歴を残すため、データが不正に使われることはないとしています。照合対象は「テロや殺人など協定で決められた一定の犯罪に限られる」とNHKニュースにはあるけど、外務省では「重大な犯罪,特にテロリズムに関連すると疑われる人物」となっており、重大な犯罪の解釈にはかなり幅がありそうです。
NHKニュースでは触れていないけど、外務省の第三項、
相手国政府からの要請がない場合においても,重大な犯罪,特にテロリズムの防止等を目的として, 国内法令に従って,関連する情報を提供できることこれは相手からの要請が無くても自ら提供しますよということ。
要請されてないのに政府というか公安が持っているブラックリストみたいなもんをポンと渡すということかと。
NHKの最後。
政府は協定の実施に関する法案を閣議決定したうえで、今国会に提出する予定です。協定というのは国会審議が不要なものということ。日米安保は条約だけど、日米地位協定は条約じゃないというあれ。
条約であれば、国会の承認が必要ってのは中学校の公民で習うんだっけか。
衆参ともに過半数、「ねじれ」無しの国会ですから、そのまま通るんでしょう。
「照会の履歴を残すため、データが不正に使われることはないとしています」とあるけど、いままでのいろんな例から判断してもデータが不正に利用され、不正に蓄積される可能性が大きいと思われます。
警察国家、そのデータが他国に渡り・・・と妄想、SF小説な監視社会を超えるような状態なんだなと改めて感じる次第。
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