NHK総合「クローズアップ現代」2013.5.27
“租税回避マネー”を追え
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3353.html
日本経済新聞 - アップル、アイルランド使った節税 事実上の「二重非課税」
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO55735630R00C13A6TCJ000/?dg=1
欧米でグローバルIT(情報技術)企業の「節税」に対する批判が急速に高まっている。米議会上院は報告書で、アップルが低税率国のアイルランドに利益を集めていると指摘Appleの場合、CEOがUS上院の公聴会に呼ばれたんで大きなニュースに。
「(タックスヘイブンの)ケイマン諸島などは使っていません」。5月21日の米上院公聴会で、アップルのクック最高経営責任者(CEO)はこう説明し、税金逃れではないと強調した。Appleの場合は法人税率の低いアイルランドを「活用」 することで「節税」していたようです。
「ケイマン諸島などは使っていません」とはっきり証言してますし、これ以上の怪しいことは無さそうに思えます。
Appleの節税のカラクリは以下の通り。
企業を誘致のため、アイルランドが税率を下げたというのがそもそものスタート。
- アップルが設立したアイルランド子会社が、「製造業者から製品を仕入れ、高めの価格で欧州、アジアなど海外拠点に販売」した。(日本を含めた海外拠点は単に販売を仲介するだけ。アイルランドに利益が集まる仕組みにした。US国内での販売はUS本社)
- アップル本社とアイルランド子会社が知的財産の研究開発コストを分担する契約を結んだ。子会社は本社よりも多くのコストを負担し、それに見合う利益を本社と分ける。知的財産の付加価値が大きいほどアイルランドに利益がたまる。
- 「USは設立地が国内の会社に課税」「アイルランドは国内に経営機能がある会社に課税」という税制なので、『アイルランド子会社を「USに経営実態を置く形」』にすることで両国から基本的に課税されない。その結果、アイルランド子会社が現地でも米国でも課税されない「二重非課税」に近い状態になった。
まぁ、よく考えるもんだわと思います。
そうそう、スターバックスの節税については、山形浩生さんが翻訳されてます。
「エコノミスト」より:スタバの節税など
ついでにイケア(IKEA)のケースも参考になります。組み立て式会計:イケア (IKEA) の不思議な企業構造
http://cruel.org/economist/ikea.html
Appleの場合、USカリフォルニアで研究開発やデザインをやってます。
カリフォルニアでiPhoneやiPadなどを開発、設計→台湾・中国の会社に製造委託(ホンハイグループですね)→アイルランドのApple子会社が製品を買い上げ→US除く各国のApple販社に販売を委託(卸)→US除く各国で販売→客が買う→回収した利益はアイルランドの子会社へ という感じでしょうか。
まぁ、感情的には「許せん!」ってことになるんでしょうけど、アイルランドの子会社がちゃんと存在し、仕入れ、販売そして知財に関する契約が機能していればいいわけですからね。(アイルランドも国策として企業誘致してるんだし)
山形浩生さんがスタバやイケアの例で『別に税金逃れしてるから儲かっているのではない。儲かっているからこうした税金逃れができるのだ。そこらへんは誤解なきよう』と書いてる通りで、そこのとこは大事。
クローズアップ現代でも登場した「財団」経由での「節税」はこちらが詳しいです。
オランダの NPOセクター
http://www.iti.or.jp/kikan54/54nagasaka.pdf
こういうのを知ると「日本だけが特殊」「日本は乗り遅れてる」なんて短絡した考えにはならないんじゃないかと思います。(「日本の法人税が高い」というのもカラクリがあって実際、上場企業はそんなに払ってないとか、国内の売買で発生する「消費税」も最終製品を輸出すると「消費税」を支払わなくてもいいから輸出戻し税で消費税分が還付される(本来、預かってるはずの消費税を還付しなくてもいいんだから『着服公認』ですね)仕組みとかいろいろあります)
上にも出てきたケイマン諸島ってそもそも日本でも「タックスヘイブン」として有名で、ちょっと前には「オリンパスの巨額損失隠し」の舞台にもなったところ。
なんでこういうところが存在するのか。なんで今まで放置されてきたのかってことをもっと知るべき話かと。
ケイマン諸島というのはイギリスの海外領土。君主はあの「女王様」ですし、イギリスが「それ」を認めているから存在するもの。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケイマン諸島の経済
タックス・ヘイヴン「金融立国」って言葉、何年かに一度、日本も「金融立国になるべき」などと話題になることがありますが、実際はこういう仕組みを用意しているからロンドンの「シティ」が存在できているってことじゃないのかと。
ケイマン諸島内において事業を行わない特例会社(exempted company)、特例リミテッド・パートナーシップ(exempted limited company)、特例信託(exempted trust)は、外国企業によって利用されている。これらは、他の種々の便益とともに、所得、資本およびキャピタル・ゲインに対しても非課税となることが保証されている。
深読みすれば、通貨をユーロにせず、通貨ポンドを維持する(自国の裁量が利く)というとこも関係してくるようなお話。(ああ、陰謀論めいてきた・・・)
http://ja.wikipedia.org/wiki/タックス・ヘイヴン
まぁたくさんの「天国」が存在するってことです。
ケイマン諸島そのものは透明性を上げて信頼されるように努めていくそうではありますが、さてどうなりますことやら。
あの瀕死状態だったApple Computerがいまのようにどこでも目にするようになったのを「なんか違う」と思ってた昔からのAppleユーザにしてみたら「あー、やっぱり叩かれた」という感じかと。
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