2013年6月6日

日本の公共放送に望むもの(NHK-FMの使命は終わっていない)


USの公共放送でのJames Blakeコンサートのストリーミング配信、BBCラジオのストリーミング配信で思ったことは、日本の公共放送の出遅れ感

規制緩和、規制緩和と掛け声はするものの、規制緩和を叫ぶ人たちのお手本である「新自由主義」のイギリス(UK)では、BBCラジオが長波(LW)、中波(AM)、FM、デジタルラジオとさまざまな電波媒体+Internet配信という形で運営中。(新自由主義に舵を切った1980年代以降チャンネルが増えてます)

BBCのその放送内容の充実ぶりには驚きます。(テレビ放送だとBSフジで放送している "Top Gear" もBBCの番組)日本で言えば、NHK日本放送協会)なんですが、がんばってるんだけどもの足りなさを感じます。

NHKだっていっぱい放送してるじゃんと言われそうだし、実際にテレビでは地上波2つ(NHK総合とNHK教育)、衛星放送2つ(NHK-BS1、NHK-BSプレミアム)、AMはNHK第1と第2、FMはNHK-FMと7つの放送。短波放送・海外向けのNHKワールドも入れると8つかな。ラジオに限ってもAMとFMで3つあるわけです。

実際に最近また動きのある「竹中平蔵」という人が、2006年に以下の報告をまとめています。
(『維新』から『自民』への変わり身の早さはさすがですねぇ)

通信・放送の在り方に関する懇談会

通信・放送の在り方に関する懇談会 報告書
2006年6月6日

NHKのチャンネルの削減

現行のNHKの8チャンネルは、電波の希少性、個々のチャンネルの役割等を勘案した場合、公共放送として放送するには、明らかに多過ぎると考えられる
具体的には、衛星放送については、難視聴対策として行うことが適当であるが、そうした対策は1チャンネルで十分であり、1チャンネルを削減すべきである。次に、FMラジオ放送については、民間のFM放送や音楽配信サービスが普及している現状では、多彩な音楽番組の提供という公共放送としての役割は既に終えたものと考えられる。従って、これらの放送については、必要な周知等の措置を十分に行った上で、2011年までに停波の上、速やかに民間への開放等の措置を取り、視聴者が多様な放送を享受できるようにすべきである。他方で、地上波テレビ放送については、視聴者のニーズ等を勘案して、直ちに削減することは困難だと考えられる。地方や高齢者への配慮等の観点から、 現行の2チャンネルを当面継続すべきである。
衛星ハイビジョン放送が2011年に停波されることを勘案すれば、以上により現行の8チャンネルは5チャンネルとなり、肥大化したNHKのスリム化に貢献するものと考えられる。

前述の通り、NHKラジオは3つあると書いてますが、NHK第2は「教育放送」に特化されていますし、NHK-FMはクラシック音楽中心の編成で多彩な音楽番組の提供」という公共放送の役割を満たしていないのが実際のところ。
「FMラジオ放送については民間のFM放送や音楽配信サービスが普及している現状では、多彩な音楽番組の提供という公共放送としての役割は既に終えたものと考えられる」
このようにまとめられているわけですが、
  • 各都道府県に1局とまではいかないものの、民間のFM放送が普及しています。しかし、その編成内容は多彩な音楽番組を提供するようなものになっていないのが実情です。(金太郎アメ状態)
  • 規制緩和でコミュニティFMが各地域で開局していますが、その性格上エリアが狭く、「地域密着」「市民参加」「防災および災害時の放送」という特徴から多彩な音楽番組の提供を目的としていません。
  • 民放FM局では、トークメインで音楽の選曲は局任せ(放送局やレコード会社任せ)という番組が多く、その音楽もトークが被せられたり、途中でフェードアウトだったりするのが現状です(例外はありますが)。
  • 音楽配信サービスについては、いろいろ出てきてはいるものの、日本レコード協会の縛りのおかげでストリーミング放送で音楽を流すことには制約があり(radikoのエリア制限もその一つ)、Podcastでは音楽はNGというのが現状で音楽を中心とした番組を配信できない状態です。
  • 音楽配信サービスは、iTunes Storeなどの販売サービスやSONYのMusic Unlimitedでの定額制がスタートしたものの、自分がまだ知らない音楽への「気付き」や「きっかけ」になるようなものがほとんど無いのが現状。(海外のSoundCloudは日本でも使えるけど、Spotifyはまだ日本でサービスを開始しておらず利用できません)
  • Internetのおかげで自分で「キーワード」を頼りに探すことはできるようになったけど、「放送」のようなサービスは存在しないというのが現状です。
たくさんあった「FM情報誌」が廃れ、一誌も残っていない原因はいくつもあると思いますが、放送を聴く人が「エアチェックしなくなった」というのは大きいんじゃないかと思います。

曲の最初から最後まできっちり掛ける番組が減り、トークが被さったりするのが当たり前。流れる音楽も画一的。多様・多彩とは真逆なベクトル。(そうじゃない「稀な番組」はあるにはありますが、ミュージシャンがやっている特定のファン層を獲得した番組+スポンサーが付いている番組だけじゃないかと)

1980年代に入りカセットテープやFM放送よりも音質の良いCDの普及が進んでいく中で、エアチェックは次第に廃れ始めた。 さらに、エアチェックの基礎となる「番組表で楽曲編成」が困難な電撃テレフォンジョッキーを中心とするリクエスト番組の構成が(J-WAVEなどで)話題を博したり、楽曲にディスクジョッキーの曲紹介をかぶせる放送の手法が主流となってきた事等から、1990年代前半にはFM放送のエアチェックの需要が急速に無くなっていき、多くのFM情報誌も廃刊や休刊を余儀なくされた。
1980年代がFM情報誌のピークだったので、Wikipediaの廃れ始めたタイミングには異議ありなんですが、J-WAVEのところは納得できる部分。“お洒落な音楽だけを流し続ける”FM局という意味で「多彩」とは無関係なわけです。

日本のラジオ放送のデジタル化が頓挫し、これ以上民間FM局が増えることも絶望的。(InterFMのようにオーナーが転々とする民間FM局もあるわけですし)

規制緩和を逆手に取って、NHKのラジオ放送にがんばってもらいたいところ。
NHK-FMをクラシック専門局、その他と分けるだけでもいいんですけどね。(もう一つ加えるなら、在留外国人向けの多言語放送も。災害の際は複数の外国語で放送できるようにすれば万全。InterFMが全国ネットになったようなものでもいいけど、「日本の国際競争力を高める」という「政策」を逆手に取ってぜひとも実現してもらいたいもの)

NHKラジオの場合AMとFMの交通整理がうまくできていないのがやっぱりネックなんですよ。
FM局とNHK第1で放送しているサブカル系の音楽番組も引っ越せますしね。「エレうた!」とか高音質なんでAM放送だともったいない番組ですもんね。ストリーミングで聴けばいいんだけどクルマだとそうはいかないわけですよ。

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