ITmedia PC USER 野村ケンジのぶらんにゅ~PCオーディオ コラム
なぜ「ポタアンを使うと音がよくなる」と言われているのか
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1208/30/news077.html
ポータブルヘッドフォンアンプの存在理由が書かれたコラムなんです。ソニーもポータブルヘッドフォンアンプの製造・販売を開始する御時世ですから、なんで?というコラムは良いタイミングですよね。
「あれ、iPodやiPhone、ウォークマンも、ヘッドフォン/イヤフォンをつなげば普通に音が出るのに、ほかにも必要なの?」という問いかけは誰もが思うようなことかと。
しかし、その理由がおかしなことになってます。
ポータブルヘッドフォンアンプの必要性を解説する記事であれば、もっと正確に書くべきです。
以下、引用しながら。
確かにポータブルプレーヤーにはヘッドフォンアンプが内蔵されているが、それらはあくまでも純正・付属イヤフォンなら十分というレベルで構成されることがほとんどだ。そこに高級ヘッドフォンを組み合わせてしまうと、音質も音量も不足することになってしまう。例えると、ベンツSクラスの車体に軽自動車のエンジンを載せて走るようなものか。単体ヘッドフォンアンプは、その高級ヘッドフォンが本来の実力を出せるよう、いわば出力を引き上げる役割を果たす。結果として「音がよくなった」という意見につながるのだと想像できる。
断定口調で書いておいて最後は「想像できる」で結ばれてます。このコラムそのものがそういう感じなんです。
「ポータブルプレーヤー」の定義が曖昧なままの断定。
「純正のイヤフォン、付属イヤフォンなら十分というレベル」という根拠はなんなんでしょうか?
「ほとんどだ」と逃げの言葉を入れているのも不可解。例外のものではポータブルヘッドフォンアンプは不要ということですよね。具体的に何を指しているんでしょうか。
例えば、iPodに純正(Apple純正だとBAイヤフォンが該当するのかな)や付属イヤフォン(いつもの白いあれですね)以上のものを接続しても「音質も音量も不足」ということですか?
そもそも、音質はともかく音量に関しては別問題では?
「ベンツSクラスの車体に軽自動車のエンジン」という比喩は正しいか。
わかりやすく書いたつもりなんでしょうが、大きな誤解を生む原因になってます。ベンツSクラスとはこれのことですよね?
http://www.mercedes-benz.co.jp/passenger/car_lineup/s-class/
メルセデスベンツSクラスの主要諸元から
ざっくり引用すれば、3,500ccで出力が300PSのエンジンに、2tという車重のクルマ。
エンジンの最大トルクは 37.7kg・m とのこと。(ちなみに気になる価格は1000万強)
軽自動車の場合、排気量は規格、出力はメーカの自主規制がありますから、過給器が付いても660ccのエンジンで最大出力は64PS。
エンジンの最大トルクは、スズキのインタークーラーターボエンジンで9.7kg・m(車重は1t以下がほとんど)
ここでオーディオの話をクルマの例で喩えていることは妥当なんでしょうか。
だいたい、Sクラスの車体に軽自動車のエンジンを積むようなことってあり得ますか?(現実味が無いですよね?BBCのTOP GEAならあり得るかな。TOP GEARの場合はジョークでやってますけどね)
「高級ヘッドフォン」の定義が曖昧で(AKGのK701だけは明記されていますが)、「ポータブルプレーヤー」と「高級ヘッドフォン」の組合せの比喩として大型セダンと軽自動車のエンジンという比喩は妥当ですか?
K701って開放型のヘッドフォンですが、(積極的に)ポータブルで使いますかね?
能率が高く慣らしやすい「高級ヘッドフォン」もありますよね?
例えばEdition8という「高級ヘッドフォン」がありますが、「音質も音量も不足」するんでしょうか?
能率が低く鳴らしにくい「高級ヘッドフォン」という組合せであってもその比喩は大げさすぎやしませんか。わかりやすさのための比喩がおかしなことになってます。
コラムは続いて「最近のポータブルオーディオ機器が持つ音質につながる機器・構成的な弱点を確認」しています。
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1208/30/news077_2.html
まず、iPodやウォークマンのようなデジタルオーディオ機器において、音質の要となるパートがある。それは「DAC(Digital to Analog Converter)」「増幅回路」「ボリューム装置」の3つ。3つの要素にわけて解説をしているわけですね。
違和感があるのは二番目の「増幅回路」に関する文章。
続いての「増幅回路」はいわゆるアンプ部分だが、信号を増幅するパートだけあって、増幅後の信号にゆがみが生じてしまいやすいパートでもある。こだわりのあるメーカーは、ゆがみを極力抑えられる高級パーツを、あるいはゆがみっぽく感じさせない音声補正的な演出を行うなど、さまざまな工夫を凝らして良質な信号を作り上げたりするのだが、この部分も機器によっては「数値的に○倍増幅されているから問題なし」と処理されることも少なからずある。結果として、質の低い信号になってしまう。
「ゆがみ」とは「ひずみ」のことでしょうか。
歪みは「ゆがみ」とも読みますが、この場合の正しい使い方は「ひずみ」だと思います。
わかりやすくするためにあえて「ゆがみ」という言葉を使ったのであれば、波形の図を用いるなどして解説するのが妥当ではないでしょうか。
というような感じで、「わかっているけど通じないコラム」なのか、「わかってないけどそれっぽいコラムなのか」の判断がつきません。
「高級ヘッドフォン」が「ベンツSクラスの車体」に化けてみたり、開放型の高級ヘッドフォンをポータブルヘッドフォンアンプを用いてで鳴らす意味は何なのか、なぜ釣り合わないのかということが書かれていません。
クルマを例にするのであれば、同じ車体で比較してみるほうがわかりやすくないですか?
車重が1.5tもあり、下位グレードの1300ccエンジンではパワー不足を感じた。上位グレードの1800ccエンジンであれば満足できる走りだ、とか。
自動車の評論というものがどうなっているのかは、WebCGのトヨタ・カローラのインプレッション記事が参考になると思います。
同じカローラなんだけど、セダンとワゴンでの性格の違い、ワゴンの中でのグレードの違いがとてもわかりやすく書かれています。
トヨタ・カローラ アクシオ1.5LUXEL(FF/CVT)【短評】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/i0000026884.html
トヨタ・カローラ フィールダー1.5G “AEROTOURER”(FF/CVT)【短評】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/i0000026923.html
「これって、セダンとは全然別物のクルマじゃないの」――。新型「カローラ フィールダー」のステアリングを握ってすぐにそう感じた。この日はトヨタ主催の試乗会で、最初にセダンの「アクシオ」を1時間、続いてステーションワゴンの「フィールダー」を1時間試すことができた。どちらも同じパワートレインを積んだ1.5リッターモデルであり、乗り味も似たようなものだろうと高をくくっていたら、予想が完全に外れてしまった。
ところで、セダンとワゴンでなぜこうも乗り味が違うのか。試乗会場に来ていたトヨタのエンジニアに質問すると、実は足まわりに2種類のセッティングがあることがわかった。フィールダーには1.8リッターと1.5リッターのモデルがある。このうち1.8リッターはスポーツグレードの位置付けで、<以下省略>
この部分だけでもトヨタ・カローラというクルマがどういうものなのか、カローラ・フィールダーに興味を持つ人も出てくるんじゃないでしょうか。
そして大事なのはちゃんとトヨタのエンジニアに確認をしていることです。
憶測、推測だけで突拍子も無い比喩を持ち出されても興味関心を持てないし、持ったとしても迷子にさせるだけだと思います。
追記
このコラムを書かれた野村さんのTwitter Plofileは以下の通り。
https://twitter.com/nomurakenji
野村ケンジ
@nomurakenji
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を書かせてもらってます。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中
クルマ好きな方であれば、なおさら今回の比喩が妥当かどうかおわかりだと思うのですが・・・
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