正確には、武田淳一著、ジミヘン本【ジミ/ヘンドリックス全曲解説/オフィシャル編】です。
同じシリーズの本はJazzの関連のものをよく見かけていたんだけど、「読むJazz」ってことだと油井正一さんの書籍(新潮文庫から出てました)を学生の時に読んでるし、最近でも新書などで大量に出ているから読もうという気すら起きなかったんですが、「ジミヘン本」、マニアックなものでも重箱の隅を突くような内容のものでもなく、正統派でした。
ジミ・ヘンドリックスの作品に対するものだけで280ページ近くの分量。
この量だとたいていはマニア向けになってしまうんですけど、オリジナルアルバムを一曲ずつ紹介していくという内容。
すでに雑誌「レコード・コレクターズ」の特集で何度か目にした内容ではあるんだけど、同じ筆者が一冊にまとめたという点でまとまりがあってよかったです。
「プロローグ」から少し長くなりますが引用します。
ジミほど不運なミュージシャンもいない。「天才ギタリスト」、「最も偉大なロック・ギタリスト」などと形容されるジミが、何故に、不運なミュージシャンといわれなければならないのか。まだ20代という若さで亡くなってしまったからか。それも確かに不運だ。しかし、それ以上に不運といわざるを得ないのは、ジミの生前から現在まで、いつの時代にもついてまわっている音源リリースの混乱によるものである。<中略>いつの時代にもこうした音源リリースの混乱状態にあるのは、ジミ・ヘンドリックスだけである。
その結果、世間ではどのようなことが起きているのか。ブートレグまがいのCDを最初に聞いた人から「ジミヘンって、スゲーっていわれてるわりにはたいしたことねーじゃん」などと言われているのである。この場合、まだ更正する可能性はある。重症なのは、ジミヘンは凄いという先入観があるあまり、ブートレグを紙一重のジャム・セッションやジミの調子が悪いときのライブを聞いて「ジミヘンは凄いんだとわかりました」などといっている人がいることなのである。
これ、すごくよくわかるんです。実際私もそうでしたから。
1980年代〜1990年代に、あれやこれやと次から次へと新しいアルバムがリリースされて、ジミヘンの何を聞けばいいんだかわからない、とりあえず何枚か聞いてわかったつもりになってしまうという状態が続いていたんです。
(ジミヘン以外だとT.REXにもその傾向がありました)
この辺の事情は、日本語版Wikipediaでも「原盤権の行方」という項になっていて詳しく書かれています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジミ・ヘンドリックス#.E5.8E.9F.E7.9B.A4.E6.A8.A9.E3.81.AE.E8.A1.8C.E6.96.B9
ヘンドリックスの音源の権利は、彼が遺言を残していないこと、マネージャーのマイケル・ジェフリーが事故死したこと、ヘンドリックスが各所にジャム音源を残していたことなどから混乱。ヘンドリックス自身はレコードデビュー後わずか4年ほどしか活動していないにも関わらず、正規版と海賊版を含め無数のレコード(CD)が市場に出回ることになった。しかし裁判の末、1990年代半ばにヘンドリックスの遺族に権利があると確定(それ以前はヘンドリックスと親交のあったミュージシャン、アラン・ダグラスが権利を持っていた)。ヘンドリックスの父アル・ヘンドリックス達によりEXPERIENCE HENDRIXという会社が設立され、ヘンドリックスの音源を管理することになり現在に至っている。混乱の様子は、Wikipediaの「ジミ・ヘンドリックスの作品」を見てもよくわかるかと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジミ・ヘンドリックスの作品
でも、ジミ・ヘンドリックスが生前に承諾したアルバムは全部で4枚。これだけなんです。
その後、ジミ・ヘンドリックスの正式な音源管理を行っている「エクスペリエンス・ヘンドリックス」から2枚のアルバム。これで合計6枚。(「ジミヘン本」には2010年リリースの「ヴァリーズ・オブ・ネプチューン」は含まれず)
生前にリリースを承認した4枚のアルバムと「ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン」を基本編として紹介、その他の音源については応用編として録音順に紹介となっています。
アルバムのリリース順、アルバムでの曲順に1ページ/曲の解説が付いているので、この通りに聞いて読んでいけば理解が深まるという構成になっています。
ジミヘン、どこから聞けばいいんだかわからない、何を聞けばいいんだかわからないという人はもちろん、わかったつもりでいたんだけど、再度聞き直してみようという方にも最適な本だと思います。
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