2010年10月12日

The Loudness War と Flat Transfer(リマスタリングCDについて思うこと)

"The Loudness War" という言葉、再発CDを取りあげることの多いレコードコレクターズ誌の記事やHead-FiのMusicフォーラム、オーディオ誌などで知るとともに、購入している「最新リマスタリング」CDで実感しています。

1990年頃からの再発CDは「都度、音質の向上」が図られ、リマスタリングという地味な作業がクローズアップされることも多々。(2009年のBeatlesのリマスターCD発売時など顕著でしたが)

じゃ、このリマスタリングがほんとに良いのか?というとこれまた微妙な話で、ファーストプレスのアナログ盤の音が一番(流通価格も一番ですが)で、これに近いか、これにいかに近づけるか、という人もいますし、様々。

録音状態が良くなかったことで有名なアルバムの音質がクリアになって良かった例(The Who の "Live at Leeds" が良い例)もあれば、ボーナストラックがどんどん追加され、従来からのファンは喜ぶけどオリジナルアルバムを知らない人には冗長なアルバムだと感じる例も。
(ボーナストラックについてはいろいろ書きたいことがありますが、この項では音質についてだけ)

旧作の音が良くなったおかげで、「Beck と 50〜60年代のBluesが好き」という嗜好の方がいてもおかしくない、違和感無く聴ける状態になったことはプラス面だと思います。

少なくとも1980年代までは、アルバムの入手が困難で、入手したとしてもLPへの録音状態はあまりよくないという状況でした。音の「悪さ」が「古さ」になってしまうという状態でした。

これが1990年あたりからのリマスタリングで音が「現代化」され、新作と旧作をあわせて聴いても違和感が無いというありがたい状態になっています。(未だにCD化されないアルバムもありますが、入手性がずっと良くなったというのは事実ですからね)

じゃ、そのリマスタリングCD、実際どうなの?となると、全般的に音圧が上がり、聞きやすくなっています。
でもほんとにそれで良いの?という疑問が、"The Loudness War" でして、音圧を上げていくことへの警鐘でもあります。

Wikipedia(英語)の "Loudness War" を読んでいただくと分かるとおりなんですが、Youtubeでもいろいろと出てきます。

実際の曲を使ってのわかりやすい比較(2006年公開の "The Loudness War" の古典的動画)
Big-name CD manufacturers are distorting sounds to make them seem louder. Sound quality suffers.


使われている曲は、Paul McCartney の "Flowers In The Dirt" (1989) に収録されている、"Figure Of Eight" です。
この曲そのものは1989年発売のCD以降リマスタリング再発されていない(はず)です。(Paul 不遇時代の好きな曲なんですけどね。)

ここで言う「ラウドネス」、具体的には「マスタリング時に大きな音を抑え、小さな音を大きくする」ということを指します。

比較例:上記Wikipediaのページより。(Michael Jackson - Black or White


上から、1991年 "Dangerous"、1995年 "HIStory: Past, Present and Future, Book I"、2007年 "The Ultimate Collection"の順。

リマスタリングされていくに従って、「過度な音の調整」(コンプレッサー過多)がされていく状態がわかります。

The Beatlesの比較をされている方も。
最初はご本人の前口上。
Beatles Remasters 2009 - Are They Worth It?
http://www.youtube.com/watch?v=4NJZ2be2gxE&feature=related

続く Beatles remasters 2009 Are They Worth It? Part 2 でLP、1987年のCD、2009年のCDの3つを比較しています。(各メディアから "Let It Be" のパートを切り替え、通しで聴けるようになっています)



Head-Fiでは、このスレッドになります。(進行形)
The Loudness War - your experiences
http://www.head-fi.org/forum/thread/461106/the-loudness-war-your-experiences


音づくりという意味では、78回転のSP盤から33/45回転のLP盤へ、LP盤からCDへ、そして音楽配信へという物理メディアの変化だけでなく、AM放送からFM放送へという放送形態の変化も大きく影響しています。

1960年代のモータウンでの音決めは、AMラジオでよく聞こえるか。
1980年代からは日本の民放FM局でも音づくりをして放送。
ラジカセでよく聞こえるような音づくり。(「重低音」の定義が変わったのもこれ以降)
(現在はイヤフォンでよく聞こえるかという音づくり?)


「過度な補正」を改め、リマスタリングを行うエンジニアが解釈を加える前の音源(初期のマスター音源)を用い、余計なことをしないストレートな音を目指すという方向性での再発もされ初めています。

今までの "Loudness" に対し、"Flat Transfer" と呼ばれているようです。
具体的には、80年代の初期のCDや 高音質なCDをリリースしている"Audio Fidelity" など。
日本でも「国内オリジナル・アナログ・テープを基にした2010年最新DSDマスター」、「英国オリジナル・アナログ・テープを基にした2010年最新DSDマスター」を用いたSACDが発売されています。(ユニバーサルミュージックのSHM-SACD

多様化しつつあるとも言えますが、特定の層に向けてのアピールに留まっているというのが現状かと思います。
(Flat Transferのものは、売り切りの再発盤が多いのも特長ですね)

しかし、こうも再発されてしまうと何度も何度も買い直し(買い増し)たCDがいくつもあり、捨てるに捨てられない状態になってます。

The Beatles はまだ少ない方ですが、1987年のCD化以降でもこんな感じ。

1993年の赤盤青盤 、1999年の"Yellow Submarine"、2000年の "1"、2003年の "Let It Be... Naked"、2004年の"The Capitol Albums, Volume 1"、2006年の "The Capitol Albums, Volume 2"、そして昨年2009年の一連のリマスター盤("Stereo" と "Mono")。("Anthorogy 1〜3"、"Love" もあるけど・・・)
そして今年は赤盤、青盤のリマスター盤が発売に。
(昨年のThe Beatlesのリマスターは "Loudness" と "Flat Transfer" のバランスの良いバランスだと思います)


いつまで続くんだろう、この連鎖はという感じです。



関連
Loudness War : "(Just Like) Starting Over" で比較

Audio Fidelity



SHM-SACD




The Beatles



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