2013年5月28日

踊ってはいけない国、踊ることが義務教育になった国

話題になっている「ダンス規制」については行き過ぎというスタンスです。
選挙活動への「ネット利用」がようやくできるようになった国なので、今でも大昔の法律が縛りになっているという一例なんだと感じています。


朝日新聞デジタル - 法律で規制すべきダンスとは? 警察庁幹部に聞く
http://www.asahi.com/national/update/1228/TKY201212270988.html
 ――法律で規制されるダンスとは何かについて、活発な議論がツイッターなどで続いています。
 なぜ規制しているかを考えて頂きたい。客商売だから、変な人がこれをうまく利用するということも考えられる。そういったことに使われては困る。悪い商売をする人たちの商売につながりかねない。ですから、善良な風俗を害することを排除するためにも、法律の規制は必要なんです。
 ――薬物に関する法律や青少年健全育成に関する法律など、個別の方法で対処するべきではないですか。
 それでは事後的な対応しかできなくなる。これだけたくさん踊る場所がある中で、抑止ができなくなりますね。運転免許制度と同じです。一定の条件のもとでやって下さいよ、ということ。許可を取ればできるのですから、ダンスをするなと言っているわけではない。ちゃんと健全なことができる業種ですから。ダンスを敵視してはいない。
 ――ダンスホール的営業の部分の「ダンス」の解釈は、ナイトクラブ的営業の部分の「ダンス」の解釈でもあるのですか。クラブには、音楽を聴きに行っているだけという客もいると思うのですが。
 ナイトクラブ的営業でいうところのダンスは、基本的にはダンス全般です。踊りの質もあるにはありますが、そこに悪いものがつけこむ余地があるかどうか、というところです。扇情的なものはなく、聴きに行っているだけ、という人もいるでしょう。それでも、問題がある人が入っていける場所でもある

記者が突っ込んでいるように、踊り、踊る場所を規制するのは筋違いじゃないかと。

警察庁幹部の言う「変な人が」「利用」するから、「悪い商売をする人たちの商売につなが」るから、「悪いものがつけこむ余地があるかどうか」というのが根拠になっています。

「問題のある人」が利用するからってことだと、「ダンス規制」どころか、免許制度はあるけれど「自動車を運転することへの規制」(今は根拠となる法律が無いだけで「変な人」が「悪い商売」にたくさん利用。毎日のように「事件」が発生してますよね)、極論すれば「移動の自由」すら奪われかねないんじゃないかと。
(実際に群馬県青少年健全育成条例のように「夜間の移動制限」を課すところが出ているので「極論」でもないんですが)

根拠となる法律の定義は以下の通り。
http://ja.wikipedia.org/wiki/風俗営業

風俗営業の定義 

風適法第二条は、次の各号のいずれかに該当する営業を風俗営業として定義し、業務の適正化のための措置を講じている。(風適法第2条第1項より引用)
  1. キヤバレー(キャバレー)その他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
  2. 待合、料理店、カフエー(カフェー)その他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
  3. ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。)
  4. ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業(第一号若しくは前号に該当する営業又は客にダンスを教授するための営業のうちダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業を除く。) <以下省略>

朝日新聞の記事では、夜中遅くまでやっているから近所迷惑になってるとか「幹部」の人は言ってますが、拡大解釈され以下のようなことになっているのが実際。

2013年05月11日

毎日新聞 - 風営法:タンゴやサルサも規制? 「クラブ」摘発の余波
http://mainichi.jp/select/news/20130511k0000e040204000c.html
若者が踊る「クラブ」の摘発を目的とした「風営法に基づくダンス営業規制」強化の余波で、公民館などのダンス教室が中止に追い込まれるなどの混乱が生じている。警察庁は規制緩和方針を出したが、混乱は収まっていない。
 高知市では昨年5月、高齢者向けの社交ダンスの公民館講座が突然、市の要請で中止になった。社交ダンスは、国が指定する2団体から認定された講師がいる場合に限り、同法の規制対象外となるが、この講座の講師は無認定だった。公民館を管理する市が高知県警と相談し、開講すれば無許可営業に当たると判断した結果だった。
 こうした事態に対し、警察庁は「健康増進目的の場合、同法上の『営業』に当たらない」との見解を示し、昨年12月に都道府県警に法解釈の通知を出した。この中で、規制対象外のダンス教室・講座として「男女がペアで踊るのが通常の形態とされていないもの」とし、ヒップホップダンスや盆踊りを例示。しかし、男女ペアが原則のタンゴやサルサは依然規制対象となっており、街のダンス教室関係者には更に戸惑いが広がっている。
 タンゴは、男女が即興的に踊る南米・アルゼンチンの伝統的舞踊で、国内の愛好者は約1万人という。兵庫県でタンゴ教室を10年以上経営している50代の男性は「風俗営業と言われても……」と首をかしげる。スタジオに防音設備を入れ、午後10時以降は踊らないなど配慮し、これまで苦情を寄せられたことはないという。
 同庁は通知と並行して同法施行令・規則も改正し、社交ダンスに限られていた「認定講師」を他のダンスでも認めた。ダンス種別ごとに法人格を持つ団体を設立し、講習会などで講師を認定する態勢を整えれば、教室などは対象外となる。
 タンゴ教室関係者も団体設立の協議を始めたが、運営方法や資金など課題は多く、めどは立っていない。兵庫の教室経営者は「生活があり、教室をやめるわけにはいかない。音楽や絵などと同じ芸術の一つなのに、法で規制されるなんて」と釈然としない表情だ。

歴史のある(社交ダンス=Ballroom dance)タンゴやサルサは「男女ペアが原則」だから対象。(国指定の団体認定講師がいる場合に限り対象外)

みなさんお好きな「セレブ」のたしなみでもある「社交ダンス」が風営法に抵触する怖れがあるという、踊る自由の無い国。
「踊る阿呆に見る阿呆・・・」の阿波踊りは男女ペアじゃないから対象外のようですが、男女ペアだと駄目、客を踊らせる場の提供も駄目とか「外圧」に期待するしかないんでしょうか。(TPP参加後、外資の運営するクラブが摘発→ISD条項でという流れ?)



そうかと思えば、明るい話題。(明るいかどうかは微妙だけど)
学習指導要領が変わって文部科学省ではダンスを取り入れるようになっています。
中学生向けのものから。

中学校学習指導要領
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/index.htm
第2章 各教科 第7節 保健体育
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/hotai.htm




文部科学省 - 新学習指導要領に基づく中学校向け「ダンス」リーフレット
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/jyujitsu/1306098.htm

ダンスって:古今東西老若男女が楽しむ身体活動
Q1 なぜ、ダンスが必修になったのですか?
A  多くの領域の学習体験をさせた上で自ら適した運動を選択できるようにするため、第1学年及び第2学年を通じて、これまで選択で実施されていた「ダンス」と「武道」を含め、すべての領域が必修となったからです。    
Q4 男女共習で実施したほうがよいですか?A それぞれのよさを認め合えるチャンスです。男女の特徴(男子:力強いダイナミックな動きができる、女子:柔らかい細やかな動きができる 等)を活かした授業づくりを工夫しましょう。

こちらでは男女一緒にダンスをすることで、「それぞれのよさを認め合えるチャンス」と明記されています。(上図のように「手をつないだり、接触するのイヤだな」や「2人組やグループになるのは苦手だな」と記載されており、「男女ペア」で踊ることも想定されています)

この学習指導要領で学び、育った人達が社会に出るようになると「ダンス」に対するネガティブなイメージが払拭されるんでしょうか。
それとも大人になって現実社会では「ダンス=いかがわしい」とされていることを知り、落胆することになるんでしょうか。


0 件のコメント:

コメントを投稿