輸入盤の魅力は安さ。以前は大都市圏じゃないとなかなか買えないものでしたが、今では通販で簡単に購入できるので輸入盤を買うという行為も普通になったんじゃないかなと思います。
日本盤は解説や歌詞対訳が付いているうえに、「先行発売」だったり「ボーナストラック」が付いていたりというのがよくあるパターン。再発盤だと「紙ジャケ」だったり「高品質素材使用」だったりというのも多いですね。「特典」があるからあえて日本盤を買うってこともあります。(解説が大瀧詠一、山下達郎だったりすると迷わず日本盤だったりしますし)
通常は日本盤は「ていねいな仕事」だなぁと思ったりするんですけども、再発盤やベスト盤となるとそうじゃないことも多いようです。
エコー&ザ・バニーメンの1987年リリースのアルバム、"Echo & the Bunnymen"の廉価版がこれです。BWCD-1021(WQCP-265) 税込み1680円。
発売元ワーナーミュージックジャパン、販売元BMGファンハウス
"BEST"や「ベスト」の文字が目立ちますが、彼らの楽曲を編集したものではなく、通常リリースされたものの「再発盤」です。(リマスターの表記無し。ボーナストラック無し)
1680円という価格、輸入盤を購入している人からしたら「普通」だと思いますが、国内だと廉価版扱いなのか、簡単な解説文と楽曲一覧だけの紙が1枚だけ。歌詞は付いている場合と付いていない場合があるのでなんとも言えないところですが、簡単な解説だけでアルバムのクレジットについてはケース裏(バックインレイ)の小さな英語の文字を読むしかないという状態。
これだったら輸入盤CDを買った方が良いんではないの?と思うと同時にこれじゃ「愛着」という二文字は出ないだろうなと思ったこと。
詳しいことはWebで調べてねってことじゃわざわざ日本盤を出す意味が無いんじゃないでしょうか。
なお、現行盤は2007年発売のWPCR-7530です。
リマスタリングされボーナストラックが7曲追加になって税込み1800円。
編集盤を二例。
まずはマーヴィン・ゲイのベスト盤、「マーヴィン・ゲイ ザ・ベスト 1200」です。
2000年にMOTOWNで発売したものの日本盤で発売年は2005年。UICY-9961 税込み1200円。
ユニバーサルミュージックより販売。 http://www.universalmusicworld.jp/the-best/index.html
見開きには1200円シリーズの一覧だけ。
『解説、歌詞、対訳はついておりません』と上記URLには書いてありますが、楽曲に関する情報が「曲名だけ」というすごい状態。しかも冊子部分には曲目に関する情報が一切無く、ケース裏面(バックインレイ)にだけ曲名(日本語と英語)だけ書いてあるという仕様です。
コンピレーションアルバムなんだから何年にリリースされた曲なのか、オリジナルはどのアルバムに入っているのかぐらい書いておいても良さそうなものなんですけど、作詞、作曲が誰なんてことも書いてません。
この「ベスト盤」を入口にしてマーヴィン・ゲイのアルバムを一枚ずつ揃えていこうと思う人のことは考えていないようです。(せっかくの売る機会なのに!)
続いてはスウィング・アウト・シスターの「スーパー・ベスト」です。2010年発売。PROI-1088 税込み999円。
制作ユニバーサルインターナショナル、発売・販売元カルチュア・コンビニエンス・クラブ(「ツタヤ限定」の廉価版シリーズですね)
帯の部分をよく読めば「輸入盤準拠/本製品は解説・歌詞・対訳は掲載しておりません」という但し書きがあります。(バーコードの上の黒い文字)
これもマーヴィン・ゲイと同じで、いつリリースされた曲なのか、どのアルバムに収録されているのかぐらい書いて欲しいところ。(作詞、作曲者名は曲名の下に小さな文字で書いてあります)
この一枚だけで済ますにしても最低限の情報ってものがあるでしょう。Internetに情報があるから自分で調べてね、という姿勢はやっぱり疑問。
「輸入盤準拠」って書いてますけど、アメリカのRhinoやイギリスのAceというリイシュー専門のレーベルではそれこそ細かく情報を掲載してますよ。
駅の通路で売ってるような格安のCD(版権がどうなっているのかわからないCD)はどうなのかわかりませんけど、マスター音源を所有している会社が制作した日本盤がこんな手抜きだとわざわざCDを買う必要なんてないじゃんと思えてしまいます。
「安いんだから仕方が無い」というのは理由にならないと思うのですよ。輸入盤に準拠するなら、その輸入盤をそのまま流通させた方が良いじゃないですか。(新星堂が日本語帯を付けて輸入盤を販売してましたね)
一般社団法人 日本レコード協会 再販制度
「商業用レコードの再販制度存続に関する要望書(要旨)」より
レコード、音楽テープ、音楽用CDの再販制度は、我が国の音楽文化を守り育ててきました。
音楽用CD等の多様な作品は、それを受け止めるユーザーの厳しい目によって生み出され、音楽文化を守り育ててきました。
再販制度存続に関わる要望書では上記のように「ユーザーの厳しい目」と書いておきながら、こんな手抜き商売をしているのが現状ではないですか。
音楽の場合、この曲いいな、誰の作曲なんだろう、他にどんな曲を〜 という流れがあったり、キャリアの長いミュージシャンの場合はいつ頃の曲なのかがわかれば、オリジナルのアルバムを買って〜という流れがあるはず。
取っ掛かりになるはずの廉価盤なのに、取っ掛かりになることを放棄しているのが上記の例。
これじゃ「CD離れ」にもなるんじゃないのかなと思います。
最近は違法なダウンロードだけじゃなくて「動画サイトのせい」と言い始めてます。
日本レコード協会「動画サイトの利用実態調査検討委員会」報告書公表
~国民の70%が動画サイトを利用、音楽ファイル違法ダウンロード年間12億~
http://www.riaj.or.jp/release/2011/pr110808.html
動画サイトは音楽CD/DVDの購入、レンタル、有料配信への支出にはマイナスの影響を与えていることが推測された。
「CDが売れない」のは違法ダウロードのせいだ、動画サイトのせいだ、なんてこと考える前にCDをちゃんとした形で販売しようとして欲しいです。
「紙ジャケ」や「高品質素材CD」の再発盤をせっせと買っているのは黙っていても買ってくれる層。
そうじゃない層に向けて安い価格でCDを販売するのは歓迎するけど、こんな手抜きCDを買ったんじゃもう一枚、とはならないんじゃないですか?
制作者側が「欲しい」と思えるような商品をつくらない、「文化を守り育てて」いないから売れないだけなんじゃないですか?
音楽のパッケージメディアを崩壊させようとしているのはレコード会社そのものなんじゃないのか?と思えてしまいます。
AV Watchの記事から
【2011年8月9日】「動画サイトは、CD購入などの音楽消費にマイナス」
-利用実態調査。消極層は「動画サイトで十分」
【2011年3月9日】違法動画/音楽ダウンロードは年間43億ファイル。RIAJ推計
-経験者の3割が過去半年で利用。「後ろめたい」は46.5%
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